注意:このブログは、読者不在を心掛けつつ、白石俊平個人の私的な文章を面白くなく綴るものです。
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話題のFACTFULNESSを読んだ。素晴らしい本である。マクロデータを元に、「世界は良くなっている」というメッセージを伝えようとする。こんなシンプルで楽観的なメッセージ、ついぞ聞いたことがない。
この本は、つまりはバイアスとの戦いだ。人間の本能に根ざしたバイアスが、認識をいかに歪めるかを雄弁に語っている。
ただし、だ。この本が教えてくれないことが1つある。それは、「バイアスと戦わない方法」だ。
この本がいかに売れようとも、いかに読みつがれようとも、人間がバイアスまみれで間違いだらけなのはきっと変わらない。
そんな人間相手に、正しい知識を持ったからと言って、一体どうしたら正しく導けるのだ?
正しいマクロデータより、心を揺さぶるミクロな事象が共感を集めるという現象と、どう付き合えばいい?
ものをよく知っている人の説く事実より、ものをよく知らない人の感情論が、より多くの共感を集めるという現象をどうしたらいい?
「知っている人」と「知らない人」の間にある途方もないギャップをどう埋めればいいと言うのだ?
1つの解決策は、諦めることだ。もちろん、情報をひた隠すわけではない。だが、正しく理解してもらうことを諦める。些末な情報として扱ってみせるのもいい。相手が好みそうな感情論に翻訳してみせるのもいい。とにかく、正確さは犠牲にする。
もう1つの解決策は、根気よく教えることだ。相手が正しく理解するまで、きちんと伝える。これはとても難しく、コストのかかる話だ。だが、もしそれができたならば、大きな効果は期待できる。グーグルは、社内教育でバイアスといかに戦うかを叩き込まれるそうだ。だからこその、あの成長ぶりである。
企業活動における現実解は、これらのハイブリッドだろう。まずは、いきなり正確に伝わることは諦めて、感情に訴えかけてでも行動を変えてもらう。それと並行して、バイアスを排した見方を根気よく啓蒙していく。
FACTFULNESSの著者は、地球温暖化に関するアル・ゴアからの「ドラマティックな資料づくり」という依頼を断ったそうだ。それが彼の使命だったのだ、それで良い。
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